ある思い出

先日選挙小話という記事を書きましたが…
実は僕自身も「選挙活動」というものにちょっとした思い出があるのです。
少し長くなるのですが、それを書いてみようと思います。


あれは確か13年ほど前…
就職を控えた大学4年の3月ごろだったでしょうか。
当時僕が住んでいたX市の市長さんが任期途中で亡くなられ
急遽市長選が行われることになったのです。

候補者は2人。

A候補
・旧住民(先祖代々X市に住む人達)代表
・亡くなった先代市長の後継候補

B候補
・新住民(ここ30年くらいの間にX市に住み始めた人達)代表
・某大手企業に務めていたインテリ

我が家は新住民の方に属していて、なおかつ父がB候補と仲が良かったため
「選挙対策委員長」的なポジションを引き受け、その関係で
僕も選挙カーの運転手として選挙活動をお手伝いすることになったのでした。

とはいえ、当時の僕はといえば政治に何の関心も持たず
投票もほとんど行ったことがないようなグータラ大学生です。
そんな僕がはるか年上の大人たちに混ざって
選挙活動をお手伝いするというのは中々ハードルが高く
最初のうちは「しんどいなぁ…」と感じていました。

どんなことをするのかというと
まず朝起きて選挙事務所(B候補の御宅)へ行き
その日回るルートとスケジュールを決めます。

「午前中は○○区と●●区ですね」
「××区は旧住民が多いから一度回っておいたほうがいいな」
「じゃあ午後は××区を回りましょう」

そしてBさんとウグイス嬢の方を乗せて街頭演説に出発するのです。
あれ結構大変なんですよ、ずっと徐行運転しなきゃいけないし
でかいワゴンで細い田圃道のようなところまで行かされるし…
イメージがありますから迂闊な行動もできません。
運転中に鼻でもほじろうもんなら
Bさんの株まで大暴落してしまいますからね。


そして事務所に帰ると、選挙を手伝ってる皆さんの奥様方が
昼食としてオニギリを用意してくれてます。
隣の部屋では僕の父を含めたB候補の側近の方たちが
選挙戦略を巡って喧々諤々の大議論。
それを横目に見つつオニギリを頬張り、食べ終わったらすぐに
午後のルートへ…
そんな生活がしばらく続きました。


すると…おかしなことに僕の心境に変化が起き始めました。


初めは億劫に感じていた筈の選挙活動が
段々と楽しくなってきたのです。


一つの目標に向かって大勢の方たちが一生懸命頑張っている
その熱気に当てられたとでも言いましょうか…
周囲の方たちは僕と姉を除けばほとんど40代以上の方ばかりだったのですが
一体感というか、仲間意識のようなものが徐々に芽生えてきたのです。
学校で言うなら部活の大会や文化祭などに向けて
皆が一丸となって突き進むあの感じに似ています。
一週間も過ぎる頃には、僕は本気で
「B候補に当選してもらいたい…!」と考えるようになっていました。


そしていよいよ市長選挙の日がやってきました。


僕は早々に投票を済ませ事務所へ。
やれることはやり尽くし、あとは結果を待つばかりなのですが
そわそわしてしまって居ても立ってもいられません。
その内に誰かがX市の地図を広げました。
各地区の得票数を予測し、選挙結果を分析しようというわけです。

「△区は旧住民が強いから7:3くらいでAさんが勝つでしょう」
「●区は大分力を入れて回りましたから、6:4でBさんが勝ちますよ!」
「×区は五分五分かなぁ…」

といった具合に皆で各区の状況を予測していきました。
正直言って、選挙戦が始まる前までは
前市長の後継候補であるAさんの方が有利という声が多かったのです。
しかし、様々な選挙活動を経て手応えを得た僕らが導き出した結論は…

「総合すると…
かなりキツ目に見ても6:4でBさんの勝ちです!

ワァッ!と盛り上がる事務所内。
僕はその時点でBさんの当選を確信しました。


そしてその日の夜、開票の時間がやってきました。

開票作業は市の総合体育館で行われるのですが
一般人はその様子を間近で見ることができません。
両陣営から一人ずつ出される立会人のみが開票作業に臨席することができ
僕らは体育館の2階にある観客席から見守ることになるのです。

体育館の真ん中にホワイトボードと2つのテーブルが置かれ
投票箱から出された投票用紙が各候補に振り分けられていくのですが
2階席からだと遠すぎて、僅差の場合どちらがどの程度リードしているのか
全く判別できません。

そこで僕らは事前にB陣営の立会人に『ある作戦』を頼んでおいたのです。

B陣営の立会人は、生真面目な選挙参謀のCさんでした。

僕  「Cさん、お願いがあるんですが」
Cさん「おお、どうしたの?」
僕  「上から見てても開票の細かい状況が分からないんですよ。
    そこで、近くで見てるCさんにサインを出していただきたくて…」
Cさん「サイン?」
僕  「そうですね、例えば…ある程度開票が進んだ段階で、
    もしBさんが勝っていたら腕組みをする。
    逆にAさんの方が勝っていたら頭の後ろに手をやって
    背もたれに寄っかかる
…とかはどうでしょうか?」

senkyo.jpg
Cさん「よし分かった、引き受けたよ!」
Cさんは快諾してくれました。
準備万端整え、僕は高鳴る胸を抑えつつ総合体育館に向かったのです。

そして開票作業が始まりました。






僕は唖然としました。



もうね…



超負けてるんですよ。



僅差だと遠目で判別がつかないから云々…とか
そんなこと言ってたのが恥ずかしくなるくらい




圧倒的大差で負けてるんですよ。



そりゃあ5000票対5500票なら判別は難しいかもしれません。
けどね、相手陣営はこっちの倍以上の票を取ってるんですよ。


机に置かれた投票用紙の束の長さが倍以上違うから
誰が見たって一目瞭然なんですよ。



ダブルスコアで完膚なきまでに
負けてるんですよ…!





開票の序盤で大勢は決し、放心状態の僕は
(6:4でこっちが勝つって…見通し甘っ!)とか
(人は自分が見たいと思う現実しか見ようとしない…byカエサル)
とか…そんなことをボンヤリと考えつつ
開票作業を眺めていたのですが…

そこでふと思い出したのです。
(そういえば俺…Cさんにサイン出してくれって頼んでた…!)
(けど…いくらなんでもここまで大差ついてたらCさんもそれどころじゃ…)
僕はCさんの方へ視線を向けました。







すると、生真面目なCさんは…






真っ青な顔で…






背もたれが折れんばかりに
椅子に寄っかかってたんですよ…

senkyo2.jpg



(Cさん…すいませんでした…
もういいんです…
わかりますから…もうっ…!)

senkyo3.jpg
僕は心の中で涙ながらに絶叫したのでした…


ものすごい長文で失礼致しました。それでは。



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No title

はじめまして。

内水先生のブログを始められたことを知り、最初から読んでました。
先生の描かれた貴重な原稿など見られてめちゃくちゃ興奮しました!

そしてこちらの記事のオチで声を出して笑いました(笑

これからもブログ楽しみにしております!
漫画の方も頑張ってください!

Re: No title

はじめまして!
そう言っていただけて恐縮です!
今後ともよろしくお願いいたします!
プロフィール

uchimizu730

Author:uchimizu730
内水融(うちみず とおる)と
申します。
漫画を描いております。
内水融・作品履歴
ご連絡等ございましたら
こちらまで…
uchimizu730@yahoo.co.jp

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